未払い残業代のリスクとは?中小企業が確認すべき労務管理の基本

未払い残業代のリスクや中小企業が確認すべき労務管理の基本を確認する経営者と人事担当者のアイキャッチ画像
目次

未払い残業代のリスクとは?

未払い残業代のリスクとは、会社が本来支払うべき時間外労働、休日労働、深夜労働などの割増賃金を正しく支払えていないことで、後から従業員や退職者から請求を受ける可能性がある労務リスクです。

中小企業では、

「これまで問題になったことがない」
「社員から不満を言われたことがない」
「固定残業代を払っているから大丈夫」
「管理職には残業代は不要だと思っていた」
「タイムカードはあるので問題ないはず」

と考えているケースもあります。

しかし、未払い残業代の問題は、社員が在籍している間には表面化しないこともあります。

退職後に請求される。
労働基準監督署から指摘される。
弁護士や社労士を通じて通知が届く。
複数の社員に問題が広がる。

このような形で、ある日突然、会社の経営課題として表面化することがあります。

未払い残業代の問題は、単なる給与計算のミスではありません。

社員との信頼関係、採用活動、会社の信用、資金繰りにも影響する可能性があります。

この記事では、中小企業が未払い残業代のリスクを防ぐために確認すべき労務管理の基本を解説します。

※本記事は一般的な情報提供を目的とした内容です。実際の労務判断や制度設計については、社労士・弁護士などの専門家へ確認することをおすすめします。

未払い残業代が発生しやすい会社の特徴

未払い残業代は、悪意がなくても発生することがあります。

むしろ中小企業では、長年の慣習や曖昧な運用によって、気づかないうちにリスクを抱えているケースがあります。

勤怠管理が曖昧になっている

まず注意したいのが、勤怠管理が曖昧なケースです。

たとえば、

出勤時間と退勤時間を正確に記録していない。
手書きの出勤簿だけで管理している。
実際の退勤時間と記録がズレている。
タイムカード打刻後に作業している。
始業前の準備時間を労働時間に含めていない。
休日出勤の記録が残っていない。
持ち帰り仕事や業務連絡の実態を把握していない。

このような状態では、会社が労働時間を正しく把握できていない可能性があります。

労働時間は、給与計算の基礎です。

ここが曖昧なままだと、残業代の計算も正確にできません。

固定残業代の運用が曖昧になっている

固定残業代を導入している会社も注意が必要です。

固定残業代とは、一定時間分の時間外労働等に対する割増賃金を、あらかじめ給与に含めて支払う仕組みです。

ただし、固定残業代を支払っていれば、どれだけ残業しても追加支給しなくてよいわけではありません。

たとえば、

固定残業代が何時間分なのか分からない。
基本給と固定残業代が明確に分かれていない。
雇用契約書や求人票に明示されていない。
固定残業時間を超えた分の残業代を支払っていない。
深夜労働や休日労働の扱いが曖昧。
給与明細に内訳が記載されていない。

このような状態では、固定残業代の運用に問題がある可能性があります。

固定残業代は、会社にとって便利な制度に見えるかもしれません。

しかし、正しく設計・運用しなければ、未払い残業代のリスクにつながります。

管理職だから残業代不要だと思っている

「管理職には残業代を払わなくてよい」と考えている会社もあります。

しかし、社内で部長や課長という役職がついていることと、労働基準法上の管理監督者に該当することは別です。

実際には、

経営者と一体的な立場にあるか。
労働時間の裁量があるか。
その地位にふさわしい待遇を受けているか。
出退勤の自由があるか。

などを総合的に見て判断されます。

役職名だけで判断するのは危険です。

中小企業では、名前だけ管理職になっていても、実際には一般社員と同じように勤務時間を管理され、現場業務に従事しているケースもあります。

この場合、残業代の支払いが必要になる可能性があります。

36協定や就業規則の確認が不十分

法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合は、36協定の締結・届出が必要です。

また、就業規則や賃金規程には、労働時間、休日、残業代の計算方法、固定残業代の扱いなどを明確にしておく必要があります。

しかし実際には、

36協定を届け出ていない。
毎年の更新を忘れている。
就業規則が古いままになっている。
実際の勤務実態と就業規則が合っていない。
固定残業代のルールが明記されていない。
賃金規程と給与明細の内容が一致していない。

というケースがあります。

労務管理では、制度があるだけでは不十分です。

書類上のルールと実際の運用が合っているかを確認することが重要です。

未払い残業代が会社に与える影響

未払い残業代の問題が発生すると、会社にはさまざまな影響があります。

金銭的な負担が発生する

未払い残業代を請求された場合、過去にさかのぼって支払いが必要になることがあります。

対象者が一人だけであっても、期間や労働時間によっては大きな金額になる可能性があります。

さらに、同じような勤務実態の社員が複数いる場合、一人の請求をきっかけに、他の社員にも問題が広がることがあります。

中小企業にとって、想定外の支払いは資金繰りに大きな影響を与えます。

社員との信頼関係が崩れる

未払い残業代の問題は、お金だけの問題ではありません。

社員から見ると、

「正しく扱われていなかった」
「会社に軽く見られていた」
「頑張りが報われていなかった」

と感じるきっかけになります。

一度不信感が広がると、職場の雰囲気やモチベーションにも影響します。

場合によっては、退職や連鎖的な不満につながることもあります。

採用活動にも悪影響が出る

労務トラブルは、採用活動にも影響します。

求職者は、応募前に会社の評判や働き方を確認することがあります。

未払い残業代や労務管理に関する悪い印象が広がると、

応募が減る。
面接辞退が増える。
内定承諾率が下がる。
既存社員からの紹介が減る。

といった影響が出る可能性があります。

採用に強い会社を作るためにも、労務管理の土台を整えることは重要です。

経営者や管理職の負担が増える

労務トラブルが発生すると、経営者や管理職は本来の業務以外に多くの時間を取られます。

事実確認。
勤怠記録の確認。
給与計算の見直し。
専門家への相談。
社員への説明。
再発防止策の検討。

これらに対応する負担は小さくありません。

問題が大きくなる前に、日頃から予防しておくことが大切です。

中小企業が確認すべき労務管理の基本

未払い残業代のリスクを防ぐために、中小企業がまず確認すべきポイントを整理します。

1. 労働時間を客観的に記録しているか

最初に確認すべきなのは、労働時間の記録です。

出勤時間、退勤時間、休憩時間、残業時間が正しく記録されているかを確認しましょう。

たとえば、

タイムカード。
ICカード。
勤怠管理システム。
PCのログオン・ログオフ記録。
業務システムの利用記録。
上長による確認。

などを活用します。

自己申告だけで管理している場合は、実態とズレがないか確認する仕組みも必要です。

特に注意したいのは、記録上は定時退勤になっているのに、実際にはその後も業務をしているケースです。

打刻後の作業、始業前の準備、休日対応などがある場合は、実態を把握する必要があります。

2. 36協定を適切に届け出ているか

法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合は、36協定が必要です。

確認すべき点は、

36協定を締結しているか。
労働基準監督署へ届け出ているか。
有効期間が切れていないか。
実際の残業時間が協定の範囲内か。
特別条項の運用が適切か。

です。

36協定は、一度出せば終わりではありません。

毎年の更新や、実際の労働時間との整合性を確認する必要があります。

3. 固定残業代の表示と運用が適切か

固定残業代を導入している場合は、特に丁寧な確認が必要です。

確認すべき点は、

固定残業代を除いた基本給が明確か。
固定残業代が何時間分・いくら分なのか明確か。
固定残業時間を超えた分を追加支給しているか。
雇用契約書や労働条件通知書に記載しているか。
求人票にも適切に表示しているか。
給与明細に内訳が分かるように記載しているか。
就業規則や賃金規程と整合しているか。

です。

固定残業代は、求人票の見せ方にも関係します。

「月給〇万円」とだけ書いて、固定残業代が含まれていることや時間数、超過分の支払いを明示していない場合、求職者とのトラブルにつながる可能性があります。

採用活動の信頼性を高めるためにも、給与表示は分かりやすくすることが重要です。

4. 給与明細の内訳が分かりやすいか

給与明細は、社員にとって給与の根拠を確認する重要な資料です。

総支給額だけではなく、

基本給。
各種手当。
固定残業代。
時間外手当。
休日手当。
深夜手当。
控除項目。
労働時間数。
残業時間数。

などが分かりやすく記載されているか確認しましょう。

給与明細の内訳が不明確だと、社員は「何に対して支払われているのか」が分かりません。

不信感を防ぐためにも、給与の内訳はできるだけ分かりやすく示すことが大切です。

5. 就業規則・雇用契約書が実態と合っているか

就業規則や雇用契約書は、会社と社員の基本ルールです。

しかし、作成したまま何年も見直していない会社もあります。

確認すべき点は、

労働時間。
休憩時間。
休日。
時間外労働。
賃金の計算方法。
固定残業代の扱い。
休日出勤。
深夜労働。
管理職の扱い。
副業や在宅勤務など新しい働き方。

です。

就業規則に書いてあることと、実際の勤務実態が違っている場合は注意が必要です。

制度や働き方が変わった時は、就業規則や雇用契約書も見直しましょう。

固定残業代を導入している会社が特に注意すべきこと

固定残業代は、中小企業でもよく使われる給与設計です。

しかし、誤った運用をすると、未払い残業代のリスクにつながります。

基本給と固定残業代を明確に分ける

給与の中に固定残業代を含める場合は、基本給と固定残業代を明確に分ける必要があります。

たとえば、

月給25万円。
基本給21万円。
固定残業代4万円。
固定残業代は〇時間分。
超過分は別途支給。

のように、内訳を明示します。

単に「月給25万円、固定残業代含む」とだけ書くと、何時間分なのか、いくら分なのかが分かりません。

これでは、社員や求職者にとって不透明です。

超過分を追加で支払う

固定残業代は、あらかじめ一定時間分の残業代を支払う仕組みです。

そのため、実際の残業時間が固定残業時間を超えた場合は、超過分を追加で支払う必要があります。

「固定残業代を払っているから、追加支給は不要」という運用は避けるべきです。

毎月の実残業時間を確認し、固定残業時間を超えていないかを管理しましょう。

深夜労働・休日労働の扱いを確認する

固定残業代の中に、時間外労働だけでなく、休日労働や深夜労働の割増賃金を含める設計にしている場合は、特に注意が必要です。

何を含めているのか。
何を含めていないのか。
超過分はどう計算するのか。
雇用契約書や就業規則に明記されているか。

を確認しましょう。

深夜勤務が発生する業種や、休日出勤が発生しやすい業種では、給与設計を専門家に確認してもらうことをおすすめします。

未払い残業代を防ぐための実務チェックリスト

自社の労務管理を見直す時は、次の項目を確認してみてください。

勤怠記録は客観的に残っているか。
出勤・退勤・休憩時間を正確に把握しているか。
打刻後の作業が発生していないか。
始業前の準備時間を把握しているか。
休日出勤や持ち帰り仕事の実態を確認しているか。
36協定を締結・届出しているか。
36協定の有効期限が切れていないか。
固定残業代の時間数と金額を明示しているか。
固定残業時間を超えた分を追加支給しているか。
給与明細に基本給・手当・残業代の内訳が記載されているか。
就業規則や賃金規程が現在の運用と合っているか。
管理職の残業代の扱いを役職名だけで判断していないか。
雇用契約書や労働条件通知書の内容が実態と合っているか。
社労士など専門家に定期的に確認してもらっているか。

すべてを一度に整えるのは難しいかもしれません。

まずは、勤怠管理、36協定、固定残業代、給与明細、就業規則の5つから確認するとよいでしょう。

労務管理は採用・定着にも影響する

労務管理は、単に法律違反を防ぐためだけのものではありません。

採用や社員定着にも大きく関係します。

求職者は、給与や休日、働き方の透明性を見ています。

求人票で給与の内訳が分かりにくい。
固定残業代の説明が曖昧。
勤務時間や残業時間の実態が分からない。
休日や休憩の扱いが不透明。

このような状態では、応募前に不安を持たれやすくなります。

また、入社後の社員にとっても、労務管理が曖昧だと会社への信頼が下がります。

「会社はちゃんと見てくれている」
「働いた分は正しく扱われている」
「ルールが明確で安心できる」

このように感じられる職場は、社員が定着しやすくなります。

労務管理は、守りの施策であると同時に、採用・定着の土台でもあります。

中小企業がまず取り組むべき労務リスク対策

未払い残業代のリスクを防ぎたい場合、最初から大きな制度改革を行う必要はありません。

まずは、できることから始めることが大切です。

勤怠記録を見直す

まずは、今の勤怠記録が実態と合っているかを確認しましょう。

出勤時間と退勤時間が正しく記録されているか。
休憩時間は実際に取れているか。
残業申請と実際の退勤時間にズレはないか。
タイムカード打刻後に作業していないか。
PCログやメール送信時間と大きくズレていないか。

を確認します。

固定残業代の表記を見直す

固定残業代を導入している場合は、求人票、雇用契約書、給与明細の表記を確認しましょう。

基本給と固定残業代が分かれているか。
何時間分・いくら分なのか明記しているか。
超過分を追加支給する旨を記載しているか。

この3点は特に重要です。

就業規則と実態を照らし合わせる

就業規則に書いてある内容と、実際の運用が合っているかを確認します。

書類上は休憩時間があるのに、実際には取れていない。
休日のルールと実際のシフトが違う。
残業申請のルールがあるが運用されていない。
固定残業代のルールが明記されていない。

このようなズレがあれば、見直しが必要です。

専門家に確認してもらう

労務管理は、法律や実務判断が関わるため、会社だけで判断するのが難しい部分があります。

特に、

固定残業代。
管理監督者の扱い。
36協定。
就業規則。
雇用契約書。
給与計算。
深夜労働・休日労働。
変形労働時間制。

などは、社労士や弁護士などの専門家に確認してもらうことをおすすめします。

まとめ:未払い残業代対策は、会社と社員を守るための土台づくり

未払い残業代のリスクを防ぐには、労働時間の把握、36協定、固定残業代の表示と運用、給与明細、就業規則を確認することが重要です。

「これまで問題になっていないから大丈夫」
「社員から何も言われていないから大丈夫」
「固定残業代を払っているから大丈夫」

という感覚だけでは、十分なリスク対策とは言えません。

大切なのは、会社として説明できる状態を作ることです。

労働時間を客観的に記録している。
残業代の計算根拠が明確になっている。
36協定や就業規則が整っている。
固定残業代の時間数・金額・超過分の扱いを明示している。
給与明細の内訳が分かりやすい。
専門家に確認してもらっている。

このような状態を作ることで、会社は労務トラブルを防ぎやすくなります。

労務管理は、会社を守るためだけのものではありません。

社員が安心して働ける環境を整え、採用や定着にもつながる重要な土台です。

中小企業こそ、問題が起きてから対応するのではなく、日頃から労務管理を見直し、安心して働ける職場づくりを進めていきましょう。

関連ページ

採用・集客・販路開拓でお悩みの方へ

ローカルブランディング株式会社では、
熊本・宮崎を中心に、九州の中小企業様向けに、
採用支援、Web集客、ホームページ制作、
動画制作、販路開拓まで、事業課題に
合わせた実務型の伴走支援を行っています。

単なる制作やアドバイスだけで終わらせず、
「問い合わせにつながる導線」
「応募につながる求人設計」
「現場で続けられる仕組みづくり」まで、
実務ベースでサポートしている点が特徴です。

これまでにも、採用に苦戦していた
飲食店の求人内容や応募導線を見直し、
1年間新規採用ゼロの状態から、
短期間で複数名の採用

つながった事例があります。

採用・集客・販路開拓に関する
お悩みがありましたら、
まずはお気軽にご相談ください。

よかったらシェアをお願いします!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次