労働法改正に備えるには?中小企業の人事が見直す3つのポイント

労働法改正や制度見直しに備えて中小企業の人事担当者が確認すべきポイントを話し合う経営者と労務担当者のアイキャッチ画像
目次

労働法改正に備えるには?

労働法改正や制度見直しの話を聞くと、

「またルールが変わるのか」
「何から確認すればよいか分からない」
「中小企業でも対応が必要なのか」
「就業規則や勤怠管理を見直すべきなのか」
「最新情報を追いきれない」

と感じる経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。

特に中小企業では、人事・労務の専任担当者がいない場合もあります。

経営者、総務担当者、現場責任者が、日々の業務と並行しながら労務対応を行っているケースも少なくありません。

そのため、法改正や制度見直しの情報が出るたびに、何をどこまで準備すべきか迷いやすくなります。

ただし、労働法改正への対応は、単に「罰則を避けるため」だけのものではありません。

社員が安心して働ける環境を整えること。

長時間労働や働きすぎを防ぐこと。

柔軟な働き方に対応すること。

採用や定着につながる職場づくりを進めること。

こうした意味でも重要です。

この記事では、今後の労働法改正や制度見直しに備えて、中小企業の人事・労務担当者が見直したい3つのポイントを解説します。

なお、法改正の内容や施行時期は今後変更される可能性があります。

実際の対応を進める際は、厚生労働省や労働局などの最新情報を確認し、必要に応じて社会保険労務士などの専門家に相談してください。

なぜ今、労務ルールの見直しが必要なのか

労務ルールを見直す必要がある理由は、働き方が大きく変わっているからです。

以前は、全員が同じ時間に出社し、同じ場所で働き、会社の中だけで仕事をする働き方が一般的でした。

しかし現在は、

リモートワーク。

副業・兼業。

短時間勤務。

育児や介護との両立。

シフト勤務。

フレックスタイム制。

多様な雇用形態。

など、働き方が多様化しています。

その一方で、長時間労働、メンタル不調、人手不足、採用難、離職防止といった課題も続いています。

会社としては、事業を回しながら、社員の健康と働きやすさも守る必要があります。

法改正は「守り」だけでなく「職場改善」のきっかけになる

労働法改正と聞くと、どうしても面倒な手続きや書類対応をイメージしがちです。

もちろん、就業規則、雇用契約書、勤怠管理、給与計算などの確認は必要です。

しかし、法改正への対応は、職場の働き方を見直すきっかけにもなります。

たとえば、

社員が十分に休めているか。

残業が特定の人に偏っていないか。

副業や兼業の相談に対応できるルールがあるか。

シフトや勤務時間の管理が曖昧になっていないか。

働き方の希望を聞く機会があるか。

こうした点を確認することで、社員が安心して働きやすい職場づくりにつながります。

採用が難しい時代だからこそ、労務ルールを整えることは、採用力や定着率にも関わります。

中小企業の人事が見直す3つのポイント

労働法改正や制度見直しに備える時、中小企業がまず確認したいのは次の3つです。

勤務間インターバルへの備え。

副業・兼業ルールの整理。

柔軟な働き方に対応できる勤務管理。

順番に見ていきましょう。

1. 勤務間インターバルへの備え

勤務間インターバルとは、勤務が終わってから次の勤務が始まるまでの間に、一定時間以上の休息時間を確保する考え方です。

簡単に言えば、

「夜遅くまで働いた社員を、翌朝すぐに出社させない」

というルールです。

たとえば、前日の勤務が22時に終わった場合、翌日の始業までに十分な休息時間を確保する必要があります。

この制度は、社員の睡眠時間や生活時間を守り、働きすぎを防ぐために重要です。

なぜ勤務間インターバルが注目されているのか

長時間労働の問題は、単に月の残業時間だけでは判断できません。

たとえば、月全体の残業時間は多くなくても、

遅番の翌日に早番が入る。

夜遅くまで残業して、翌朝通常通り出社する。

トラブル対応で深夜まで働き、翌日も朝から勤務する。

このような働き方が続くと、十分な休息を取れなくなります。

勤務間インターバルは、日々の勤務と勤務の間に休息時間を確保することで、社員の健康を守るための考え方です。

中小企業で確認したいこと

中小企業がまず確認したいのは、現在の勤務実態です。

具体的には、

退勤時間と翌日の出勤時間の間隔はどれくらいか。

遅番の翌日に早番が入っていないか。

残業が多い社員に翌朝の早出が重なっていないか。

管理職や責任者だけが長時間勤務になっていないか。

シフト作成時に休息時間を意識できているか。

を確認しましょう。

勤怠システムを導入している場合は、退勤から翌出勤までの時間を確認できるかも見ておくとよいです。

紙やExcelで管理している場合でも、まずは直近1〜3ヶ月分を見て、無理な勤務間隔がないか確認することから始められます。

今からできる準備

勤務間インターバルへの備えとして、まずは次のような準備が現実的です。

退勤時刻と翌出勤時刻を把握する。

遅番翌日の早番をできるだけ避ける。

長時間勤務が続く社員を確認する。

管理職や店長の働き方も確認する。

シフト作成時のルールを見直す。

勤怠管理の記録を残す。

いきなり制度を完璧に作る必要はありません。

まずは、自社の勤務実態を見える化することが大切です。

2. 副業・兼業ルールの整理

副業・兼業を希望する社員は増えています。

収入を増やしたい。

自分のスキルを広げたい。

将来の独立に向けて経験を積みたい。

趣味や得意分野を仕事にしたい。

社外で学んだことを本業にも活かしたい。

このような理由から、副業・兼業を考える人がいます。

一方で、会社側としては、

労働時間の管理。

健康管理。

情報漏えい。

競業避止。

本業への支障。

事故やトラブル時の責任。

などを心配することがあります。

副業を禁止するだけでは対応しにくくなっている

以前は、就業規則で副業を一律に禁止している会社も多くありました。

しかし、現在は働き方の多様化により、副業・兼業を認める会社も増えています。

もちろん、すべての副業を無条件に認める必要はありません。

本業に支障が出る場合、会社の信用を損なう場合、秘密情報が漏れる恐れがある場合などは、一定の制限や確認が必要です。

大切なのは、「なんとなく禁止」ではなく、会社としての考え方とルールを整理しておくことです。

中小企業で確認したいこと

副業・兼業について、まず確認したいのは次の点です。

就業規則に副業・兼業の規定があるか。

届出制や許可制のルールが明確か。

どのような副業なら認めるのか。

どのような副業は制限するのか。

労働時間や健康状態をどう把握するのか。

会社の秘密情報や競業に関するルールがあるか。

副業中のトラブル時の対応を想定しているか。

副業・兼業の相談が来てから慌てて対応すると、判断がぶれやすくなります。

社員から相談があった時に説明できるよう、事前にルールを整理しておきましょう。

今からできる準備

副業・兼業に備えるためには、次の準備が有効です。

就業規則の副業・兼業規定を確認する。

副業・兼業の届出書を用意する。

会社として認める範囲と制限する範囲を整理する。

秘密保持や競業に関するルールを確認する。

長時間労働や健康管理への配慮を決める。

社員から相談があった時の対応窓口を決める。

副業・兼業は、社員の成長やスキルアップにつながる可能性もあります。

一方で、ルールが曖昧だとトラブルにつながることもあります。

禁止するか認めるかだけで考えるのではなく、安心して相談できるルールづくりが大切です。

3. 柔軟な働き方に対応できる勤務管理

今後の労務対応では、柔軟な働き方への対応も重要になります。

人手不足が続く中で、社員一人ひとりの事情に合わせた働き方を検討する場面は増えています。

たとえば、

育児と両立したい社員。

介護をしながら働く社員。

短時間勤務を希望する社員。

副業と両立したい社員。

週休3日を希望する社員。

繁忙期と閑散期で勤務時間を調整したい会社。

こうした状況に対応するには、勤務時間や休日の管理を曖昧にしないことが大切です。

柔軟な働き方にはルールが必要

柔軟な働き方というと、自由に働けるイメージがあります。

しかし、実際にはルールが必要です。

始業・終業時刻をどう管理するのか。

休憩時間をどう取るのか。

残業の申請方法はどうするのか。

休日の扱いをどうするのか。

シフト変更は誰が承認するのか。

短時間勤務者の業務範囲をどう決めるのか。

評価や給与とどう連動させるのか。

ここが曖昧だと、社員間の不公平感や労務トラブルにつながります。

柔軟な働き方を進めるほど、基本のルールと記録が重要になります。

中小企業で確認したいこと

柔軟な働き方に対応するために、まず確認したいのは次の点です。

労働時間を正確に記録できているか。

休憩時間が実際に取れているか。

残業の申請・承認ルールがあるか。

シフト変更の履歴を残しているか。

法定休日と所定休日を区別できているか。

短時間勤務者やパート社員の契約内容が明確か。

働き方の違いが評価や待遇にどう影響するか整理されているか。

勤務管理が曖昧なまま柔軟な働き方を導入すると、後で説明が難しくなることがあります。

まずは、今の勤務管理がきちんと記録として残っているか確認しましょう。

今からできる準備

柔軟な働き方に対応するためには、次のような準備が現実的です。

雇用契約書の勤務時間・休日欄を確認する。

就業規則と実際の運用にズレがないか確認する。

勤怠記録の取り方を統一する。

残業申請・承認ルールを整える。

シフト変更時の記録を残す。

働き方の希望を聞く面談を行う。

社員ごとの働き方を属人的に管理しない仕組みを作る。

柔軟な働き方は、採用や定着にとって魅力になります。

ただし、ルールと記録が整っていなければ、かえって不公平感やトラブルの原因になることもあります。

法改正対応でよくある失敗

法改正や制度見直しに対応する時、中小企業でよくある失敗があります。

1. ニュースだけ見て慌てる

法改正に関するニュースや解説記事を見て、すぐに「対応しなければ」と焦ってしまうことがあります。

しかし、報道段階、議論段階、法案提出段階、施行決定後では、対応すべき内容が異なります。

まずは、

何が正式に決まっているのか。

何が検討段階なのか。

施行時期は決まっているのか。

自社に関係する内容なのか。

を整理しましょう。

未確定の情報に振り回されすぎず、公式情報を確認することが大切です。

2. 就業規則だけ直して終わる

法改正対応では、就業規則の見直しが必要になることがあります。

しかし、就業規則を直しただけでは十分ではありません。

社員に説明しているか。

管理職が理解しているか。

実際の運用が変わっているか。

勤怠管理や給与計算に反映されているか。

現場で守れるルールになっているか。

ここまで確認する必要があります。

制度は、紙の上で整えるだけでなく、現場で運用できて初めて意味があります。

3. 現場の実態を確認していない

労務対応で重要なのは、現場の実態を把握することです。

就業規則上は問題がなくても、実際には違う運用になっていることがあります。

たとえば、

休憩を取れていない。

残業申請前に仕事をしている。

シフト変更が口頭だけで行われている。

管理職の勤務時間が把握されていない。

副業の相談があっても記録が残っていない。

このような状態では、制度を作っても実態とズレてしまいます。

法改正対応の第一歩は、現場の働き方を確認することです。

中小企業がまず取り組むべき労務チェック

法改正や制度見直しに備えるために、最初から大きな制度改定をする必要はありません。

まずは、次の3つから始めるのがおすすめです。

1. 勤怠記録を確認する

まず、直近1〜3ヶ月分の勤怠記録を確認しましょう。

退勤時間が遅い社員はいないか。

翌朝の出勤が早すぎるケースはないか。

残業が特定の人に偏っていないか。

休憩時間が記録上だけになっていないか。

休日出勤が続いていないか。

勤怠記録を見ることで、法改正以前に改善すべき働き方が見えてくることがあります。

2. 就業規則と実際の運用を比べる

次に、就業規則と実際の運用が合っているか確認しましょう。

勤務時間。

休憩時間。

休日。

残業申請。

副業・兼業。

休暇制度。

シフト変更。

これらについて、規則に書いてある内容と現場の運用が違っていないかを確認します。

ルールと実態がズレている場合は、どちらを見直すべきか整理しましょう。

3. 社員から相談が出やすいテーマを把握する

最後に、社員から相談が出やすいテーマを確認します。

副業をしたい。

家庭の事情で勤務時間を変えたい。

残業を減らしたい。

休みを取りやすくしたい。

体調面で不安がある。

働き方を相談したい。

こうした相談が出ている場合、今後の制度見直しと関係する可能性があります。

社員の声は、労務改善のヒントになります。

労務ルール見直しのチェックリスト

自社の労務ルールを見直す時は、次の項目を確認してみてください。

勤務終了から翌日の出勤までの時間を把握しているか。

遅番翌日の早番など、休息時間が短くなる勤務がないか。

残業が特定の社員に偏っていないか。

管理職や責任者の労働時間も確認しているか。

副業・兼業に関する就業規則の規定があるか。

副業・兼業の届出や相談ルールがあるか。

秘密保持や競業に関するルールを整理しているか。

労働時間や休憩時間を正確に記録しているか。

残業申請・承認のルールがあるか。

シフト変更の記録を残しているか。

短時間勤務や柔軟な働き方のルールが明確か。

就業規則と実際の運用にズレがないか。

法改正情報を定期的に確認しているか。

必要に応じて専門家に相談できる体制があるか。

チェックが少ない場合、法改正対応以前に、日々の労務管理に見直し余地があるかもしれません。

法改正対応を採用・定着につなげる考え方

労務ルールの見直しは、守りの対応だけではありません。

採用や定着にも関わります。

求職者は、求人票や採用ページを見る時に、

働きすぎにならないか。

休みは取れるか。

副業や柔軟な働き方に理解があるか。

家庭や生活との両立ができるか。

安心して相談できる会社か。

を気にしています。

労務ルールが整っている会社は、求職者に安心感を伝えやすくなります。

また、既存社員にとっても、

無理な働き方を放置しない。

相談しやすい。

働き方の変化に対応してくれる。

健康や生活を大切にしてくれる。

という印象につながります。

法改正対応は、単なる義務対応ではなく、「長く働きたい会社」を作るための土台です。

まとめ:法改正に焦る前に、自社の働き方を見える化する

労働法改正や制度見直しの情報が出ると、何から対応すればよいか不安になりやすいものです。

しかし、最初にやるべきことは、難しい制度を作ることではありません。

まずは、自社の働き方を見える化することです。

中小企業が見直したいポイントは、次の3つです。

勤務間インターバルへの備え。

副業・兼業ルールの整理。

柔軟な働き方に対応できる勤務管理。

これらは、今後の法改正に備えるだけでなく、社員の健康、働きやすさ、採用、定着にもつながります。

法改正の内容は、今後変更される可能性があります。

だからこそ、未確定情報に振り回されるのではなく、

勤怠記録を確認する。

就業規則と運用のズレを見る。

社員から出ている相談を把握する。

公式情報を確認する。

必要に応じて専門家に相談する。

という基本を整えておくことが大切です。

労務ルールは、会社を縛るためだけのものではありません。

社員が安心して働き、会社が無理なく成長していくための土台です。

まずは、直近の勤怠記録と就業規則を確認するところから始めてみましょう。

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