出戻り採用とは?中小企業が退職者との関係を採用に活かす考え方

出戻り採用とは?
出戻り採用とは、一度会社を退職した社員を、再び採用することです。
以前働いていた社員が、別の会社で経験を積んだ後に戻ってくる。
家庭の事情や転居などで退職した人が、状況の変化により再び働く。
退職後も良い関係が続いていた元社員に、会社側から声をかける。
このように、過去に自社で働いた経験のある人を再雇用する採用方法が、出戻り採用です。
以前は「一度辞めた人をまた採用するのはどうなのか」と考える会社も少なくありませんでした。
しかし、人手不足が続く中で、出戻り採用を前向きに考える中小企業も増えています。
なぜなら、出戻り人材には、まったく新しい応募者にはない強みがあるからです。
会社の雰囲気を知っている。
仕事内容をある程度理解している。
社内の人間関係を知っている。
会社側も本人の性格や働き方を知っている。
入社後のミスマッチが起こりにくい。
もちろん、出戻り採用には注意点もあります。
なぜ退職したのか。
戻ってきたい理由は何か。
以前と同じ問題が再発しないか。
現社員がどう受け止めるか。
待遇や役割をどうするか。
こうした点を確認せずに採用すると、再びミスマッチが起きる可能性があります。
この記事では、出戻り採用とは何か、中小企業が導入するメリット、注意点、退職者との関係を採用に活かす考え方を解説します。
出戻り採用が注目される理由
出戻り採用が注目される背景には、中小企業の採用難があります。
求人を出しても応募が来ない。
応募が来ても条件が合わない。
採用してもすぐ辞めてしまう。
求人広告費が増えている。
採用担当者や現場の負担が大きい。
このような状況では、新規応募だけに頼る採用には限界があります。
そこで見直されているのが、過去に自社と接点のあった人材です。
その中でも、一度働いた経験のある元社員は、会社にとって貴重な採用候補者になります。
採用は「新しく出会う」だけではない
採用というと、新しい応募者を集めることに意識が向きがちです。
しかし、採用候補者は求人媒体の中だけにいるわけではありません。
過去に応募してくれた人。
以前働いていた社員。
取引先や関係者。
社員の知人。
過去に面接したが採用に至らなかった人。
このような人たちも、将来の採用候補者になる可能性があります。
出戻り採用は、過去の関係性を採用に活かす方法の一つです。
出戻り採用とアルムナイ採用の違い
出戻り採用と似た言葉に、アルムナイ採用があります。
アルムナイとは、もともと卒業生や同窓生という意味の言葉です。
採用の文脈では、退職した元社員とのつながりを保ち、将来的な再雇用や協業につなげる考え方として使われます。
出戻り採用は、退職した人を再び採用することそのものを指します。
一方で、アルムナイ採用は、退職者との関係づくりまで含む広い考え方です。
たとえば、
退職者と定期的に連絡を取る。
会社の近況を共有する。
退職者向けの交流の場を作る。
副業や業務委託で関わってもらう。
タイミングが合えば再雇用する。
このような取り組みがアルムナイ採用に近い考え方です。
中小企業では、難しい制度を作らなくても構いません。
まずは、退職者と良い関係を残すことが大切です。
中小企業が出戻り採用を行うメリット
出戻り採用には、中小企業にとって大きなメリットがあります。
主なメリットを整理します。
1. 採用ミスマッチを減らしやすい
出戻り採用の大きなメリットは、採用ミスマッチを減らしやすいことです。
まったく新しい応募者の場合、入社してみるまで分からないことが多くあります。
仕事の進め方。
職場の雰囲気。
社長や上司との相性。
忙しさの感覚。
社内のルール。
求められる役割。
これらは求人票や面接だけでは完全には伝わりません。
一方で、出戻り人材は、過去にその会社で働いた経験があります。
会社の良い面も大変な面も、ある程度理解しています。
会社側も、本人の働き方や性格を知っています。
お互いに情報がある状態で採用できるため、ミスマッチを減らしやすくなります。
2. 立ち上がりが早い
出戻り人材は、完全な未経験者よりも立ち上がりが早い傾向があります。
会社の基本的な考え方を知っている。
業務の流れを理解している。
社内の人を知っている。
過去の経験を活かせる。
教育にかかる時間を短縮しやすい。
もちろん、退職してから時間が経っていれば、業務内容や社内体制が変わっていることもあります。
そのため、再教育は必要です。
それでも、会社の空気をまったく知らない人を採用する場合に比べると、早く馴染みやすい可能性があります。
3. 退職後の経験を活かしてもらえる
出戻り人材は、退職後に別の会社や別の環境を経験している場合があります。
その経験は、会社にとってプラスになることがあります。
他社の仕事の進め方を知っている。
新しいスキルを身につけている。
以前より視野が広がっている。
自社の良さを外から見直している。
別の環境を経験したからこそ、戻る意思が強い。
一度外に出た人が戻ってくることは、会社にとってマイナスではありません。
むしろ、外で得た経験を自社に還元してもらえる可能性があります。
4. 採用コストを抑えやすい
出戻り採用は、求人広告や人材紹介だけに頼らない採用方法です。
元社員との関係が続いていれば、会社側から声をかけることもできます。
また、元社員から相談が来ることもあります。
新規応募を集めるために広告費をかけるだけでなく、過去の関係性を活かすことで、採用コストを抑えやすくなります。
ただし、出戻り採用も無料で簡単にできるわけではありません。
退職者との関係を良好に保つこと。
再雇用時の条件を整理すること。
現社員への説明を行うこと。
入社後の役割を明確にすること。
このような準備は必要です。
出戻り採用で注意すべきこと
出戻り採用にはメリットがありますが、慎重に進めるべき点もあります。
特に注意したいのは、次の4つです。
1. 退職理由を確認する
出戻り採用で最も重要なのは、前回の退職理由を確認することです。
なぜ退職したのか。
退職理由は解消されているのか。
会社側に改善できる点はあったのか。
本人の状況は変わったのか。
同じ理由で再び退職する可能性はないか。
ここを曖昧にしたまま採用すると、同じ問題が再発する可能性があります。
たとえば、前回の退職理由が人間関係だった場合、当時の環境が変わっていなければ、また同じ不満が出るかもしれません。
給与や労働時間が理由だった場合、条件面をすり合わせなければ再びミスマッチになります。
退職理由を責める必要はありません。
しかし、再雇用する前に、冷静に確認する必要があります。
2. 現社員の感情に配慮する
出戻り採用では、現社員の受け止め方にも注意が必要です。
一度辞めた人が戻ってくることに対して、現社員が複雑に感じる場合があります。
なぜ戻ってこられるのか。
待遇が良くなるのではないか。
前と同じように働けるのか。
自分たちの負担が増えないか。
以前の人間関係は大丈夫なのか。
特に、退職時にトラブルがあった場合や、現社員との関係に課題があった場合は慎重に進める必要があります。
出戻り採用は、本人と会社だけの問題ではありません。
受け入れる現場の納得感も大切です。
3. 以前と同じ感覚で受け入れない
元社員だからといって、以前とまったく同じように働けるとは限りません。
会社の体制が変わっている。
仕事内容が変わっている。
社員構成が変わっている。
本人の価値観や働き方も変わっている。
以前の経験があるから大丈夫、と決めつけるのは危険です。
再入社時には、新しい社員として改めて受け入れ設計を行う必要があります。
会社の変化。
現在のルール。
今のチーム体制。
期待する役割。
評価基準。
これらをしっかり伝えましょう。
4. 特別扱いしすぎない
出戻り人材を特別扱いしすぎると、現社員との関係に影響することがあります。
元社員だから説明を省く。
以前いたからすぐに任せる。
待遇を曖昧に決める。
現社員への説明が不足する。
特別なポジションを与えすぎる。
もちろん、経験や能力に応じた待遇は必要です。
しかし、現社員が不公平に感じないように、役割や条件を明確にすることが大切です。
出戻り採用に向いている人
すべての退職者が出戻り採用に向いているわけではありません。
再雇用を検討しやすいのは、次のような人です。
退職時の関係が良好だった人。
退職理由が明確で、現在は解消されている人。
以前の勤務態度や人柄に信頼がある人。
会社の価値観を理解している人。
退職後に新しい経験やスキルを身につけた人。
戻りたい理由が前向きな人。
現社員との関係に大きな問題がない人。
一方で、慎重に判断すべきケースもあります。
退職時にトラブルがあった。
前回の退職理由が解消されていない。
職場の雰囲気を乱す可能性がある。
戻りたい理由が消極的すぎる。
条件だけで戻ろうとしている。
現社員が強く不安を感じている。
出戻り採用では、「知っている人だから安心」と考えすぎないことが大切です。
知っているからこそ、冷静な確認が必要です。
出戻り採用を進める手順
出戻り採用を行う場合は、勢いだけで進めず、手順を整理しておくことが大切です。
1. 退職理由を整理する
まず、前回の退職理由を確認します。
本人から聞くだけでなく、会社側の記録や当時の状況も確認します。
給与や待遇。
仕事内容。
人間関係。
働き方。
家庭の事情。
キャリアアップ。
会社への不満。
どのような理由で退職したのかを整理しましょう。
そのうえで、現在その理由がどうなっているかを確認します。
解消されているのか。
まだ残っているのか。
会社側で改善できるのか。
本人の考え方が変わっているのか。
ここを確認することが、再離職を防ぐ第一歩です。
2. 戻りたい理由を確認する
次に、本人がなぜ戻りたいのかを確認します。
前向きな理由なのか。
一時的な理由なのか。
他に選択肢がないからなのか。
自社で何をしたいのか。
以前と違う点を理解しているのか。
戻りたい理由が曖昧な場合、再入社後にまたズレが起きる可能性があります。
「以前働いていたから何となく安心」という理由だけでは、慎重に考えた方がよいでしょう。
3. 現在の仕事内容と条件を説明する
会社は以前と同じではありません。
再雇用する場合は、現在の仕事内容や条件を改めて説明する必要があります。
現在の業務内容。
担当する役割。
勤務条件。
給与や待遇。
評価基準。
チーム体制。
求める成果。
教育やフォロー体制。
以前のイメージのまま戻ってくると、入社後にギャップが生まれます。
「前と同じだと思っていた」という状態を防ぐためにも、今の会社の状況を丁寧に共有しましょう。
4. 現社員への説明を行う
出戻り採用を行う場合、現社員への説明も大切です。
なぜ再雇用するのか。
どのような役割で戻るのか。
待遇やポジションはどうなるのか。
現場にどのような影響があるのか。
受け入れ時に協力してほしいことは何か。
説明が不足すると、現社員が不信感を持つことがあります。
特に、小さな組織では一人の入社が職場の雰囲気に大きく影響します。
本人だけでなく、受け入れる側への配慮も必要です。
5. 再入社後のフォローを行う
元社員であっても、再入社後のフォローは必要です。
以前働いていたから大丈夫。
知っている人だから放置しても問題ない。
すぐに戦力になるはず。
このように考えると、再びギャップが生まれます。
再入社後も、入社初日、1週間、1ヶ月のタイミングで確認しましょう。
今の職場に違和感はないか。
以前との違いで戸惑っていることはないか。
業務量は適切か。
人間関係に不安はないか。
期待されている役割は明確か。
元社員だからこそ、言いにくい不安を抱えることもあります。
フォローの場を用意することが大切です。
退職者との関係を採用に活かすには
出戻り採用は、退職後に急に声をかければうまくいくものではありません。
退職時から、その後の関係づくりが始まっています。
中小企業が意識したいのは、退職者と良い関係で終わることです。
1. 退職時の対応を丁寧にする
退職者との関係は、退職時の対応で大きく変わります。
退職を責める。
冷たい態度を取る。
急に距離を置く。
引き継ぎだけを事務的に進める。
不満を残したまま退職させる。
このような対応をすると、将来的に関係を戻すのは難しくなります。
もちろん、退職は会社にとって負担になることもあります。
しかし、退職者も将来の関係者です。
丁寧に送り出すことは、採用や紹介にもつながる可能性があります。
2. 退職後もゆるくつながる
退職後も、無理のない範囲でつながりを持つことは有効です。
会社の近況を伝える。
SNSでつながる。
年賀状や節目の連絡をする。
業務委託や副業で関わる。
人材を紹介してもらう。
タイミングが合えば再雇用の相談をする。
大切なのは、退職者を「辞めた人」として切り捨てないことです。
良い関係が残っていれば、再び一緒に働く可能性もあります。
3. 退職者から紹介が生まれることもある
出戻り採用だけでなく、退職者が別の人を紹介してくれることもあります。
自分は戻れないけれど、知人に合いそうな人がいる。
以前働いていた会社だから紹介しやすい。
会社の雰囲気を知っているから説明できる。
このように、退職者は採用広報の協力者になる場合もあります。
そのためにも、退職時や退職後の関係性が重要です。
出戻り採用で使える確認質問
出戻り採用を検討する場合、面談では次のような質問をしてみるとよいです。
前回退職した理由を、今はどのように捉えていますか。
今回、もう一度働きたいと思った理由は何ですか。
以前働いていた時と、今の会社で違いがあることは理解していますか。
前回と同じ不安が出た場合、どのように相談できそうですか。
退職後に身についた経験やスキルはありますか。
今回戻る場合、どのような役割を希望していますか。
働き方や待遇面で確認しておきたいことはありますか。
現社員との関係で不安な点はありますか。
再入社後、最初の1ヶ月で確認しておきたいことはありますか。
これらは、本人を責めるための質問ではありません。
再び同じミスマッチを起こさないための確認です。
出戻り採用を成功させるチェックリスト
出戻り採用を進める前に、次の項目を確認してみてください。
前回の退職理由を確認しているか。
退職理由が現在解消されているか。
戻りたい理由が明確か。
現在の仕事内容や条件を説明しているか。
以前と今の会社の違いを伝えているか。
現社員の受け止め方に配慮しているか。
待遇や役割を明確にしているか。
特別扱いになりすぎていないか。
再入社後のフォロー体制があるか。
退職時の関係が良好だったか。
採用基準を曖昧にしていないか。
再び同じ理由で辞めるリスクを確認しているか。
このチェックが不十分なまま進めると、出戻り採用が再び離職につながる可能性があります。
出戻り採用は「退職者を大切にする会社づくり」でもある
出戻り採用を成功させるには、退職者との関係をどう捉えるかが重要です。
一度辞めた人は関係ない。
退職した人に声をかけるのは気まずい。
辞めた人が戻るのは良くない。
このように考える会社もあるかもしれません。
しかし、今は働き方やキャリアの選択肢が多様になっています。
一度退職したからといって、関係が完全に終わるとは限りません。
外で経験を積んで戻ってくる人もいます。
別の形で会社を支えてくれる人もいます。
知人を紹介してくれる人もいます。
退職者との関係を大切にすることは、採用力の一部になります。
まとめ:出戻り採用は過去の関係性を活かす採用方法
出戻り採用とは、一度退職した社員を再び採用する方法です。
中小企業にとって、出戻り人材は貴重な採用候補者になることがあります。
会社の雰囲気を知っている。
仕事内容を理解している。
会社側も本人の性格や働き方を知っている。
退職後の経験を活かしてもらえる。
採用ミスマッチを減らしやすい。
このようなメリットがあります。
一方で、前回の退職理由や現社員の感情、待遇や役割の整理を曖昧にすると、再びミスマッチが起こる可能性もあります。
出戻り採用を行う時は、次の点を確認しましょう。
前回の退職理由は解消されているか。
戻りたい理由は前向きか。
現在の仕事内容や条件を理解しているか。
現社員が納得して受け入れられるか。
再入社後のフォロー体制があるか。
採用は、新しい応募者を集めるだけではありません。
過去に働いてくれた人、過去に関係があった人とのつながりも、会社の大切な採用資産です。
人手不足に悩んでいる場合は、求人広告だけでなく、退職者との関係をどう活かせるかも見直してみてください。
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